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園長だより H30年10月

 

ありがとう70周年

 

月行われました卒業生絵画展には、準備の為の半日保育等、ご理解とご協力をいただきありがとうございました。初日は雨天であったにもかかわらず、二日間で千二百名を超える方々にお越しいただきました。

 

前日準備の終盤に、会場内に吊るされた昭和の38年間分の絵画と並べられた平成の29年間分の絵画を見た時、私は圧巻とも圧倒とも表現しきれない程の思いに包まれました。

 

そこにあるのは、まさしく坂戸幼稚園が「ここ」で歩んできた歴史であり、普段は意識したくても容易に出来ずにいる「時間」そのものであると感じました。目には見えないものが目に見える形で「ここ」に在る。それがどれ程ありがたいことなのか…私は創立者の志に心から感謝しました。

 

心が震える、心が揺さぶられる二日間でした。来場していただいたご卒業生とご家族の表情や所作のひとつずつに胸が高鳴り、絞めつけられる思いの中過ごしました。その一つずつをどう表現すれば良いかを思いあぐね、エピソードとして記すことにいたします。

 

和29年度卒のご卒業生がご友人と共にお越し下さいました。「あなたは?」と尋ねられ「創立者の孫です」と答えますと「ああ、サダ先生に似てるわ」「私、写真を持ってきたのよ、見て」と一葉の写真を見せて下さいました。その後、吊るされた絵画をひと通りめくり、ご友人と「無かったわね」「提出しなかったんじゃないの?」と残念そうに語り合う中、私がもう一度、一枚一枚と絵画をめくりました。「あった」「これよ、これよ。ああ…私の絵」婦人は涙をこぼし絵を見つめ、そっといつくしむように絵をなぞり、そして写真を撮りました。「ありがとう」その言葉の嬉しさと重みをどう表現したら良いでしょうか。

 

年前に卒業されたお子さんがご家族と共に両日いらして下さいました。一日目には「あった。お父さんの絵だよ」と見つめていた絵。翌日には「これはお父さんの友だちの絵。よく○○して遊んだよな」とお子さんに当時の思い出話をしながら絵をめくり見つめていました。ご自身の絵の側には、一緒に時を歩んだ「友だち」がいる。そのことを伝えて下さっているようにも思えて胸があつくなりました。

 

「園長先生、ご卒業生のお母様です」と声を掛けられ振り向くと、「Tです」「ああ、T君のお母様ですか」その瞬間に手を取り合い、涙があふれてきました。T.T君は私が入職一年目に担任を持たせていただいた子で、とても子どもらしく、やんちゃな素敵なお子さんでした。「Tもね、今は35歳。子どもがふたりいてね。でも、仕事の関係で離れて暮らしているの」と毎日交わされるスマホのメールからお孫さんの写真を見せて下さいました。

 

入職初年度、つまり一年目の職員にとり、担任した子どもたちと保護者様には真に特別です。「先生になれた」という原点がそこに在るかもしれません。Tさんの外にも数名の「私の原点」の保護者様がいらして下さいました。「あの頃…」の話をする度に、情熱ばかりでスキルも経験もない私を支えて下さった保護者様のありがたさが全身にあふれ、言葉にならない程のなつかしさに包まれました。

 

催二日目の午後に車椅子で卒業生がご来園されました。お話をうかがうと、午前中にご家族の方がその方の絵を写真に撮りお見せしたところ、「どうしても実物が見たい」と入院中の病院に一時外出を願い出ていらして下さったとのことでした。「絵」はもちろん写真で見ることもできます。けれども、「本物」や「実物」の尊さは、世の中の技術がどう発展しようとも敵うはずのないものであるはずです。この卒業生はそれを見に来て下さったのだ…と胸が詰まる思いでした。

 

業生のほかにも、かつて坂戸幼稚園でお勤めいただいた先生方が沢山いらして下さいました。飯島先生は前園長と一緒に30年以上に渡り坂戸幼稚園で事務関係のお仕事をされていました。「どうかおかまいなくね」とおっしゃった後に、ゆっくりといつくしむように数々の絵画や写真、思い出の品をめぐりお帰りになりました。飯島先生は園庭を見回し、銀杏の木にそっと手をあて、そして創立者の銅像を見上げ、やわらかな表情で正門から出ていかれました。

 

創立者(祖父)が残し、前園長(母)が引き継いでくれた絵画を、こうして10年毎に見ていただく機会を得た喜びは図り知れません。来園された方々のまなざし、表情、所作、声音のひとつずつに私は「ここ」に幼稚園があってよかったと思いました。そして、それに携わる仕事、人生を与えてもらったことに深く感謝しています。

 

後に、数年前ののびのびつうしん最終号にも記した文章で閉じようと思います。神戸女学院大学名誉教授内田樹氏の著書の中の「HarborLightの役割について」という記述からの抜粋です。

 

『大学(学校)と教師には「卒後の自己教育」にとっての観測定点であり続けるという重要な任務がある(中略)教師というものは、もしかすると「道祖神」の様なものではないかと思う。積極的に何か「よいこと」をするわけではない、でもそれが子どもの時に見たままのところに、子どもの頃のままの姿をしてあることを知ると、人は「自分には根がある」という感覚を持つことができる。

 

卒業生たちが自分がどんな道程をどこに向かって歩んでいるかを確認しつつ、一歩ずつ進めるようにするためには、「母港」がいつまでもHarborLightを送り続けていることが必要である。「そこに来れば、元の自分に戻れる気がする場所」が必要である』

 

心から ありがとうございます。

 

園長 浅見 美智子

※HarborLight:ハーバーライト。港の灯り、港口灯台。

園長だより | 10:54 | comments(0)
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サッカーパパは、埼玉県坂戸市の坂戸幼稚園の事務長さんです。こどもたちとサッカーをするのが大好きなので、皆から「サッカーパパ」とか「サッカー先生」とか「ひげ先生」と呼ばれています。
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